
AI革命が主導する21世紀に、「ロウソクによって誕生した民主政権」であることを自慢する韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権。その文政権に反対する、「丸刈り」やハンストといったこれまた前時代的な闘争が流行りだした。
ハンストの方は、文政権が進めるさまざまな政策に反対する最大野党「自由韓国党」の黄教安(ファン・ギョアン)代表が青瓦台前の広場に張ったテントの中で実行したもの。8日目となる11月27日に病院へ運ばれる騒ぎとなっている。
そして、もう一方の「抗議の丸刈り」に踏み切ったのは、なんと高校生だった——。
マラソン大会のテーマが「愛国」
11月23日、ソウル市教育庁の前で仁憲(インホン)高校のキム・ファラン君(18歳)は、「チョ・ヒヨン・ソウル市教育長の辞退」を求める「丸刈り」パフォーマンスを行った。「全国学生守護連合」(学守連)が主催したこのパフォーマンスには、保守系の父兄団体の会員も参加、涙を流しながら坊主頭になるキム君を見守った。

遡ること10月17日、ソウル大公園で開かれた仁憲高校のマラソン大会が、すべての問題の発端となった。仁憲高校は毎年テーマを決めてマラソン大会を開催しているが、今年のテーマは「愛国」だった。学生たちはこのテーマに合ったスローガンが書かれたポスターを持ってマラソンに参加した。そこには「臨時政府樹立100周年」「日本経済侵略反対」「安倍自民党は滅びろ」などの文句が書かれていた。
「反日」に反発する生徒に「イルベ」の暴言
このマラソン行事について学守連側は韓国メディアとのインタビューで、次のように証言している。
「学生たちが手にしていたスローガンは大会の1週間前から準備されたものだ。教師が反日や不買運動に関するスローガンを作ってくるよう指示した」
「反日に反対するスローガンを作ってきた学生は、教師に別に呼び出され、『まだ正気ではないか』と怒られ、スローガンを作り直された」
「教師は『日本は経済侵略を謝罪しろ』『安倍自民党を滅ぼせ』などのスローガンを叫ばせた」
「反日スローガンに反対する学生たちには、『イルベ』『守旧』という暴言を浴びた」
ちなみに、「イルベ」とは、女性や特定地域、外国人などに対して敵対的な書き込みが目立つネット掲示板のことで、韓国では「極右翼」という意味でとらえられている。
学守連側が暴露した仁憲高校の教師たちの「思想注入」は、反日だけではなかった。
「曺国のニュースはすべてフェイクニュースだ。信じる者は犬や豚と同じだ」
「李明博、朴槿恵は詐欺師だ」
「私は文在寅大統領が好きだが、文大統領が好きな学生は手を上げてみろ」

この出来事を契機に、仁憲高校の在学生は学校教育における政治偏向に反対する「仁憲高校学生守護連合」を立ち上げた。そこに、似た状況に置かれた全国の高校生たちも加わって、全国学生守護連合が結成された。
10月22日、仁憲高校の生徒150人余りは弁護士の協力を得て、ソウル市教育庁に「一部の教師らから偏った思想を強要された」とし、監査を要請した。ソウル市教育庁は約30日間、仁憲高校の生徒を対象に面接調査を行い、教師の問題発言が事実だったことを確認した。
高校生を批判、「思想注入」の教師を擁護
ところがそこからがすごかった。「持続的な政治思想の注入がなく、特定の政治思想を押し付ける意図がなかった」として、特別監査を「実施しない」方針を発表したのだ。生徒に「お前はイルベか」と暴言を吐いた教師に対しても懲戒処分しないとした。
その上、ソウル市のチョ・ヒヨン教育長はわざわざ別の立場文を発表し、政治偏向教育の議論を提起した仁憲高校の生徒に対して、「省察すべきだ」と非難した。
「(問題を提起した)学生たちも省察すべき部分がある」
「彼らの意見も人類の普遍的価値、すなわち民主主義、人権、平和、正義などに照らし合わせて、同等に批判的に検討されなければならない。十分に検討されなかった(意見の)信念化は、独善に流され、自分と社会に非常に危険であることをぜひ念頭に置いてほしい」
一方で、不適切な発言をした教師に対しては「十分に理解できる」との立場を示した。
「教育者として、一部の学生の親日的発言や嫌悪的で敵対的な発言を指導する過程で、偶発的に『イルベ』などの用語や『曺国ニュース』関連の発言があったものと把握される」
「教育者として十分に理解できる部分である」
こうした教育長らの姿勢を反映し、現在、思想偏向教育の問題を提起した仁憲高校の生徒たちは、集団いじめの危機に直面している。
朝鮮日報などによると、17日のマラソン大会の映像をネットに公開したA君(16歳)は、学校でいじめに遭い、現在、転校の手続きを進めているというし、この問題に先頭に立ったキム・ファラン君も、校内でいじめを受けてソウル市教育庁に人権侵害救済を申請している状況だ。さらに問題を初めて公に提起したB君は、仁憲高校によって学校暴力対策自治委員会に回付された。というのも、彼が公開したマラソン大会の映像に映っている女子生徒から「名誉毀損」という通報があったとして、懲戒処分を議論することにしたからだという。
冒頭で紹介したキム・ファラン君の「丸刈り」は、教育長のこのような態度に対する抗議なのだ。
「支持者」でなければ、幼い生徒たちまでも「親日」や「守旧」と罵倒するのが文在寅政府の教育観である。これでは、日本との友好的関係の構築は、まだまだ望めそうにない。