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膠着する徴用工問題、解決のために尹錫悦大統領は国民に「歴史の真実」を語れ

이강기 2022. 7. 9. 21:43

膠着する徴用工問題、解決のために尹錫悦大統領は国民に「歴史の真実」を語れ

 

被害者意識にとらわれ歴史改ざんを続けていては出口なし

 
 
武藤 正敏 (元在韓国特命全権大使)
 
JB Press, 2022.7.9(土)
 

                                          韓国の尹錫悦大統領(写真:PA Images/アフロ)

 

 

「反日」色が強かった韓国の文在寅大統領から、日本に融和的な尹錫悦大統領への交代は、日韓両国に関係好転の期待を抱かせた。実際、尹大統領は両国の関係改善に意欲を見せてはいるのだが、残念ながらこれまでのところ具体的には何一つ前進していない。

 

 日韓関係改善の最大の障害になっているのが「徴用工問題」だ。

 

 

文在寅前大統領が作り上げた「歴史の罠」

 韓国国内を見ても、日韓関係の修復は急務だ。尹錫悦大統領にとって当面の最大の問題は経済の危機克服である。そのためには韓国企業の経済活動を支援していかなければならないのだが、韓国企業の活動を支援するには日韓経済関係の正常化を図らなければならない。徴用工問題はその足枷になっている。

 

 文在寅前大統領は、自分たちに都合のいいように歴史を改ざんし、それを押し通してきた。尹錫悦大統領にとっての最初の関門は、文在寅氏が作り上げた「歴史の罠」からの脱出となるだろう。

 徴用工問題がこじれるきっかけとなったのは、2012年の韓国の大法院(日本の最高裁判所に相当)の判断だった。それまでも元徴用工らは日本企業に賠償を求める訴訟を起こしていたが、いずれも原告敗訴となっていた。ところが2012年5月、大法院は原告敗訴の高裁判決を破棄し、高裁に差し戻したのだ。要するに、原告勝訴の内容だった。

 

 

 日本政府の立場はあくまでも「1965年の日韓請求権協定で請求権の問題は最終かつ完全に解決した」というもの。韓国政府の立場も、当時はこれと同じ認識だった。だが大法院はこれと真っ向対立する判断を下した。ここで、韓国政府と大法院の見解が大きく分かれることとなった。

 

 高裁で争われた差し戻し審は、当然のように原告勝訴となり、日本企業は大法院に上告した。だたし当時の大法院は、なかなか判決を下さなかった。

 

 だが、朴槿恵大統領(当時)が退陣し、文在寅氏が大統領に就任すると、風向きは一気に変わる。

 

 文在寅大統領自身が、徴用工問題について「個人の請求権の問題は未解決」などと、それまでの「日韓請求権協定により徴用工問題は解決済み」という韓国政府の立場をひっくりかえす発言をするようになった。このころから韓国内の世論も「日本企業は元徴用工たちへの賠償をするべきだ」という方向に傾いていった。

 

自縄自縛に陥った韓国

 また、朴槿恵政権時代に大法院の所属機関である「法院行政所」が徴用工訴訟に介入し、判決を遅らせたとの疑惑も浮上する。検察は行政所の所長を務めた元最高裁判事に対し、職権乱用の疑いなど逮捕状を請求するという事態まで起きた(逮捕状請求は裁判所によって棄却)。

 大法院もついに動いた。2018年10月30日、新日鉄住金(現・日本製鉄)に、さらに翌月には三菱重工に対し賠償を命ずる判決を下したのだ。さらに2019年1月には、原告側による日本企業の財産差し押さえ申請が認められたのだ。これによって、日韓関係は極度の緊張状態になった。

 

 その後、事態はどうなったか。現時点ではまだ韓国内にある日本企業の資産現金化は実施されていないが、実際にそれが行われれば、日韓関係は壊滅的な打撃を受けることになるだろう。尹錫悦大統領としては頭の痛い問題だが、司法の判断に大統領が介入することはできない。

 

 だが、実際に日本企業の資産現金化がなされることの影響を心配する声は、メディアからも上がっている。たとえば中央日報の社説(7月5日付)は「韓国政府が『条約と国際法遵守』を主張する日本を相手にするのは容易ではない」と述べている。

 

 なにしろ、自分の主張に沿うようにさんざん歴史を“改ざん”した文在寅氏も昨年の年頭会見で「強制執行方式の現金化は望ましくない。外交的解決方法を探すのが先」とそれまでのスタンスを一変させるかのような発言をしているのだ。

 

 それでも、一度下された大法院の判決が覆るはずもないし、そんなことを徴用区訴訟の原告たちが許すはずもない。韓国はまるで自縄自縛のような状況に陥っている。

 

日本が大法院判決を受け入れることはない

 この状況に日本側はどう対応するべきなのだろうか。韓国の大法院判決を前提とした交渉に日本政府や日本企業が応じる余地はなく、原則を無視した妥協もすべきではない。日本側にとっては、韓国の大法院判決は国際法違反だ。

 日本政府は韓国政府に対し、国際法違反の状態を是正することを含め適切な措置を講ずることを要求してきた。しかし、韓国側はこれに対して具体的な措置を講ずることはなかった。

 

 そのため日本政府は日韓請求権協定に基づく協議を要請したのだが、文在寅政権時代の韓国はこれにも応じないので、協定に基づく仲裁付託を韓国側に通告した。日本政府がこれを行えば、韓国政府は、仲裁に応じる協定上の義務を負うことになる。ところが、韓国政府は期限内に仲裁委員を任命せず、請求権協定に基づく解決に一切応じようとしてこなかった。

 

 韓国政府の主張は、徴用工問題解決のためには日韓双方の措置が必要であるというものだ。要するに、「日本側も少しは譲歩せよ」と言っているのだ。それなのに、日韓請求権協定に基づく協議には応じず、仲裁にも応じていない。韓国側はあくまでも大法院判決を前提として解決することを求めているのである。

 

解決案を模索する尹錫悦政権

 このように完全に膠着していた徴用工問題だが、尹錫悦大統領がようやく問題解決に向けての最初の手を打ち始めた。

 韓国政府による元徴用工問題の解決策として、日韓の企業や個人による募金で300億ウォン(約31憶円)程度の基金を作り、被害者に支給する案が浮上してきたのだ。7月4日に設立された官民協議体で、これに関する具体案の検討が進められるものと見られる、と韓国の複数のメディアが報じた。

 

 ソウル新聞は、同基金について、敗訴した日本企業には出資を求めない方向になると報道している。また産経新聞によれば、基金の主体は、請求権協定に基づき日本の経済支援を受けた韓国企業や、在日韓国人が経営する日本企業などが想定されているという。

 もっとも、韓国の市民団体などは、基金などを通じた救済ではなく、大法院判決の履行を求め、記者会見で「韓国政府が日本との破局を防ぐために現金化措置の回避に固執し、被害者保護の責務を放棄すれば、歴史的な過ちとなる」と訴えているので、この基金設立案が韓国政府の求めるものとなるかどうか、まだ予断は許さない。

 

 

官民協議会は問題解決の糸口になるか

 

 韓国では4日、徴用工問題の解決方法を模索する官民協議会の第1回目の会合が開かれた。

 

 この協議会は、外交部の趙賢東(チョ・ヒョンドン)第1次官の主宰で、徴用工被害者団体、法律代理人、学界専門家、言論・経済界から12人が参加した。

 

 この会合に参加した徴用工側のチャン・ワンイク弁護士とイム・ジェソン弁護士、民族問題研究所対外協力室のキム・ヨンファン室長は、会合とその直前の記者会見で、「被害者と日本の加害企業と直接交渉することが道理にかなっている」とし「政府が外交的努力をしてほしい」などと述べた。

 

 さらに「これは2018年大法院の判決が認めた韓国政府の『外交的保護権』の発動を最初に要請するもの」と説明した。つまり、元徴用工と日本企業とが直接交渉できるよう、韓国政府がサポートせよ、という主張だ。日本としては、あくまで両国政府間の請求権協議にて決着した問題である。そこに個別の企業を当事者として交渉させるということは断じて認めることはできない。もしある企業が元徴用工に個別に賠償をするという結果になれば、数多くの日本企業に元徴用工から賠償請求がなされる事態になってしまうだろう。

 またこの会合では「徴用工問題を国際裁判の場に移して第三者の手に委ねてみてはどうかとのアイディアも強く提起された」というが、「国内的に法案を用意し、日本と交渉する外交的解決を優先すべきで、直ちに仲裁裁判に持ち込むのは非現実的」という反論もあったという。

 

 韓国の市民団体は、徴用工と日本企業間で交渉する窓口を設ける場合にも、日本政府が徴用工と企業の交渉を妨害しないよう並行して日本政府が「1965年の日韓請求権協定ですべての問題は解決済み」とする姿勢を修正するよう求める外交交渉が必要との見解である。日本政府はこれを絶対に受け入れないだろう。

 

 韓国政府は官民協議会、あるいはそれに続く賢人会議の建議を持って、基金案を進めたいようである。しかし、このような会議を開いても徴用工支援の市民団体の宣伝に使われるだけではないだろうか。おそらく、この官民協議会で徴用工問題解決の糸口を見つけることはできないだろう。

 

 必要なことは、むしろ韓国側が発想を変え、これまでの対応が誤っていたことを国民に真摯に説明し、説得することしかないだろう。

 

 

日本政府は協定の交渉で個人補償も打診、韓国が「未解決」というのは欺瞞

 徴用工問題は日韓請求権協定で解決済みであり、文政権がこれを再度持ち出したことも、大法院の判決も誤りである。

 

 日韓国交正常化交渉の過程で、韓国政府は日本側に「対日請求要綱」を示した。同要綱は8項目で構成され、その中に「被徴用韓人の未収金、補償金及びその他の請求権の弁済を請求する」と記載されている。交渉議事録によると、1961年5月の交渉で、日本側が「個人に支払ってほしいということか」と尋ねると、韓国側は「国として請求して、国内での支払いは国内措置として必要な範囲で取る」と回答している。これらの交渉を経て請求権協定では「完全かつ最終的に解決された」と明記している。

 

 こうした交渉記録は2019年7月29日日本外務省が公表している。

 

 韓国大法院は、請求権協定は元徴用工の「精神的な慰謝料」までは含んでいないとして、日本企業に賠償を命じた。しかし、日本の外務省幹部は「韓国側は当初から『精神的な慰謝料』も含めて交渉に臨んでいた。大法院判決が協定に反しているのは明白だ」と強調している。大法院の認識不足は韓国政府の責任である。

 ただ、大法院判決が問題解決の足枷になっているのが現実である。これにどう対処するか。方法は2つであると考える。

 

 第1には、尹徳敏(ユン・ドンミン)駐日大使内定者が2019年の講演で述べたことが参考になろう。同氏は「まず財団を作るべき」「財団を作るのに日本から一切1ウォンも受け取ってはならないと考える」、大法院判決を尊重はするものの「これ以上これを持って裁判で何かをできないよう特別法を作らなければならない」「財団設立において日本企業が自発的に参加するならば歓迎する」と述べた。

 

 そして第2の方法として、国際的な仲裁裁定を求めることであろう。それは仲裁裁判所でも国際司法裁判所でもよい。そこの見解を求めた上で、大法院の判決に代わる選択肢を考案することであろう。

 

 韓国国民は日韓関係の歴史について真実を知らされていない。左翼的な市民団体の主張によって国民感情を荒らげているのが現実である。しかし、若い人々にとって歴史問題よりも現実の生活苦の方が切迫した問題である。経済成長のためには日本との協力は欠かせない。なにより韓国国民も、歴史の事実を知れば、現実的な解決策にやたらに反発することもないのではないか。

 

 

双方の経済界から高まる関係改善の要求

 日韓両国の経済界は互いに協調したい意向を持っている。

 

 7月4日、ソウルで日韓財界人会議が開かれた。日本の十倉雅和経団連会長と、韓国の許昌秀(ホ・チャンス)全国経済人連合会会長が3年ぶりにソウルで会合を開いた。

 

 両国財界人は1983年以来定期的な会合を開いてきたが、徴用工を巡って冷え込んだ両国関係に加えコロナ禍が加わり会議を開くことができなかった。

 

 会議では、8項目の共同宣言文を発表した。それにはビザ免除プログラム復活、日韓の良好な関係・維持発展が両国の発展と北東アジアの平和と安定に寄与するという内容も盛り込まれた。この会合は、ロシアのウクライナ侵攻後の世界的インフレとサプライチェーン不安が高まる中で、日韓の経済界が関係改善をどれだけ切実に望んでいるかを示す席であった。

 さらにこの財界人会議とは、別にサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は、経団連の十倉会長、東原敏昭副会長とそれぞれ会談した。

 

 十倉会長の住友化学は、サムスン電子に有機ELスマートフォン用偏光フィルムを供給しており、サムスンとはサファイアウエハーの合弁会社も運営している。東原副会長の日立とは半導体分野で協力している。

 

 日本経済新聞によれば、韓国の素材・部品・装備の国産化は足踏み状態にあるという。その点でも、民間レベルの協力関係の再構築は急務なのである。

 この会合で、韓国の財界関係者は「世界的に経済ブロック化と陣営対立が加速化する中で、韓日関係改善に向け両国が努力を本格化するタイミング。李副会長が民間外交官として素材・部品・装備生態系の復元などに大きな役割をすると期待する」と述べたという。

 

 さらに経団連代表団と面会した尹錫悦大統領は、「これからの経済安全保障時代に協力のすそ野が拡大するよう両国財界関係者が継続して疎通してほしい。両国関係野懸案解決に向けて韓日両国政府が共に努力しなくてはならないだろう」と期待を表明した。

 

 尹錫悦政権の支持率は下落傾向にある。支持率引き上げのためにも経済を回復させなければならない。そのためには日本側の戦略物資の輸出規制強化を見直してもらい、日韓の経済関係を修復しなければならない。韓国国民の間には日本と総合的な関係改善を図ることに異論がないだろう。

 

 日韓関係において、過去の韓国は被害者意識を前面に立て、日本に次々と新しい要求を押し付けてきた。尹錫悦政権の韓国は、被害者意識の束縛から離れ、客観的に歴史を直視し、日韓で包括的な関係改善の道を探るべきである。

 

 

 

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